冬コミ(C97)お疲れさまでした
JuliaBook C89 版, C90 版
2015年冬コミ(C89) 版 と2016 夏コミ (C90)版を公開しました。
C89 https://dl.dropboxusercontent.com/u/61544927/JuliaBook-C89.pdf
C90 https://dl.dropboxusercontent.com/u/61544927/JuliaBook-C90.pdf
C89 版は v0.4.2 対応の入門書で、 C90 版は v0.4.x から v0.5.x への変更点に関する本です。
【2020-01-05 追記 ココカラ】
流石に v0.4 やら v0.5 は古いです。 v1.3 に対応したバージョンが BOOTH で入手可能なのでよろしければそちらもどうぞ。
【2020-01-05 追記 ココマデ】
C89
いつもどおり超直前、てかもう明日ですがC89に参加します。 スペースは東ム54b EREX工房です。
今月頭に公開したJulia 言語本を頒布します。 Julia 本体の安定バージョンもv0.4.1 からv0.4.2 に上がっていますが、(見落としがなければ)対応済みです。他にもちょっと微修正。
最大の変更点として、表紙が付きます。今回は友人のAMIIくん にJulia-tan を描いてもらいました。
今回はあともう一冊、Gtk.jl
を用いたJulia 言語によるGUI プログラミング*1の本を頒布します。
簡単なタイマーアプリ*2を実例として、ソースコードの説明をします。
ソースコードはこちら
言語本は700 円、GUI 本は300 円です。 よろしくお願いいたします。
Julia の日付・時刻の標準ライブラリ `Base.Datas` における日付演算
JuliaLang Advent Calendar 2015 の 21 日目の記事です。
この間のJuliaTokyo#5 で話題に出たので、Base.Dates
全般の紹介をしようかと思ったのですが、日付演算が(えぐくて)面白くて文章量が多くなりすぎたので、絞りました。
概要
Julia の標準ライブラリ Base.Dates
は、日付や時刻、時間を表す型や演算、暦の取得を司るものです。
時刻と時間の算術
時間に時間を足し引きして新しい時間に作ったり、 時刻に時間を足し引きして新しい時刻を作ることができます。
julia> using Base.Dates # 時間+時間=時間 julia> Hour(1) + Minute(30) 1 hour, 30 minutes # 現在時刻 julia> nw = now() 2015-12-21T01:15:17 julia> nw + Hour(1) 2015-12-21T02:15:17 julia> nw - Minute(30) 2015-12-21T00:45:17 # 今日の日付 julia> td = today() 2015-12-21 # 明日 julia> td + Day(1) 2015-12-22 # 去年 julia> td - Year(1) 2014-12-21 # 来月 julia> td + Month(1) 2016-01-21
はい、便利ですね。
さて、1日以下と、月と年との間は、単位換算が確定しているので曖昧さなく算術可能ですが、月と日の間の算術は曖昧さを含みます。 次の16 個の日付計算で得られる結果は、それぞれ何月何日でしょう?読み進める前に予想をしてみてください。
# 2015-01-30 の julia> d = Date(Year(2015), Month(1), Day(30)) # (1) 1日後 julia> d + Day(1) # (2) 2日後 julia> d + Day(2) # (3) 1ヶ月後 julia> d + Month(1) # (4) 2ヶ月後 julia> d + Month(2) # (5) 1ヶ月後(3)の1ヶ月後 julia> (d + Month(1)) + Month(1) # (6) 1日後(1)の1ヶ月後 julia> (d + Day(1)) + Month(1) # (7) 1ヶ月後(3) の1日後 julia> (d + Month(1)) + Day(1) # (8) (1ヶ月と1日)後 julia> d + (Month(1) + Day(1)) # (9) julia> d + Month(1) + Day(1) # (10) julia> d + Day(1) + Month(1) # (11) julia> Month(1) + d + Day(1) # (12) julia> Day(1) + d + Month(1) # (13) julia> Day(1) + Month(1) + d # (14) julia> d + Month(1) + Month(1) # (15) julia> d + Month(1) - Month(1) # (16) julia> d - Month(1) + Month(1)
予想はしてみましたか?それでは答え合わせと解説です。
最初の2つは簡単ですね。
# (1) julia> d + Day(1) 2015-01-31 # (2) julia> d + Day(2) 2015-02-01
2015-01-30 の1日後と2日後は曖昧さなく、それぞれ2015-01-31 と2015-02-01 です。
それでは2015-01-30 の1ヶ月後、2ヶ月後、「1ヶ月後」の1ヶ月後は?
# (3) julia> d + Month(1) 2015-02-28 # (4) julia> d + Month(2) 2015-03-30 # (5) julia> (d + Month(1)) + Month(1) 2015-03-28
ご覧のとおりの結果です。予想はあたったでしょうか?
実はJulia は
- 年・月・日の順番に足し引きをする
- 各段階ごとに繰り上げや繰り下げを行う
- 月部分の計算が終わった段階で、月の日数が減って日部分がはみ出た場合、端数を切り捨てて丸める
というアルゴリズムで日付の計算を行います。
(3) では、2015-01-30 + 0000-01-00 = 2015-02-30 となり、この月はもちろん28 日までしかないため、丸められて2015-02-28 となります。 一方で(4) では、2015-01-30 + 0000-02-00 = 2015-03-30 となり、正当な日付となるため、そのまま答えになります。 最後に(5) では、(3) の結果 = 2015-02-28 に0000-01-00 を足すので、2015-03-28 となります。
このアルゴリズムが頭に入れば、(6)-(8) を解くことができます。 一旦予想しなおしてから、先に進みましょう。
# (6) 1日後(1)の1ヶ月後 julia> (d + Day(1)) + Month(1) # (7) 1ヶ月後(3) の1日後 julia> (d + Month(1)) + Day(1) # (8) (1ヶ月と1日)後 julia> d + (Month(1) + Day(1))
それでは答え合わせ。
# (6) julia> (d + Day(1)) + Month(1) 2015-02-28 # (7) julia> (d + Month(1)) + Day(1) 2015-03-01 # (8) julia> d + (Month(1) + Day(1)) 2015-03-01
(6) は最初の和で 2015-01-31 となって、次の和で2015-02-31 => 2015-02-28 となります。 一方(7) は最初の和で 2015-02-30 => 2015-02-28 となって、次の和で2015-02-29 => 2015-03-01 となります。 (8) では、2015-01-30 + 0000-01-01 となるのですが、年月日の順番に足し算が行われます。年は変わらず、月の足し算で 2015-02-31 => 2015-02-28 となり、最後に日が足されて 2015-02-29 => 2015-03-01 となります。
さて、カッコを外して項の順番をシャッフルしてみるとどうなるでしょう。 まずは(9), (10) から。
# (9) julia> d + Month(1) + Day(1) 2015-03-01 # (10) julia> d + Day(1) + Month(1) 2015-03-01
Julia の二項演算子のうち+
と*
では、単独の演算子で3つ以上の項を繋いだ時に、それらの項すべてを一度に引数として取るようなメソッドが呼び出されます。
実際にどこで定義されたメソッドが呼び出されるかは@which
マクロを使うと確かめることができて、例えば
julia> @which 1 + 2 +(x::Int64, y::Int64) at int.jl:8 julia> @which 1 + 2 + 3 +(a, b, c, xs...) at operators.jl:103 julia> @which d + Month(1) + Day(1) +(a::Base.Dates.TimeType, b::Base.Dates.Period, c::Base.Dates.Period) at dates/periods.jl:227
となります。今回のケースでは、 (+)(a::TimeType,b::Period,c::Period) = (+)(a,b+c)
と定義されており、(8) に帰着します。
一方(11)-(13) はどうなるか。まず何が呼び出されるのかをチェックしてみると、すべて同じ定義
julia> @which Month(1) + d + Day(1) +(a, b, c, xs...) at operators.jl:103
となります*1。
これは何かというと、どんな型の値でも foldl
関数と二項演算子+(x,y)
とを使って左から順番に畳み込んでいく定義になっています。
つまり、 (11) はMonth(1) + d + Day(1) == (Month(1) + d) + Day(1)
となり、(7) に帰着します。
同様に(12) は(6) に、(13) は(8) に帰着します。
# (11) julia> Month(1) + d + Day(1) 2015-03-01 # (12) julia> Day(1) + d + Month(1) 2015-02-28 # (13) julia> Day(1) + Month(1) + d 2015-03-01
最後の3問です。今までの知識があれば、もうほんの少しの調査・考察で解けるはずです。
# (14) julia> d + Month(1) + Month(1) # (15) julia> d + Month(1) - Month(1) # (16) julia> d - Month(1) + Month(1)
(14) はもう大丈夫ですね。日付に足す前に後ろの期間どうしの足し算が実行されるので、答えは 2015-01-30 + 0000-02-00 = 2015-03-30 です。
一方(15), (16) では、演算子が混ざっているので、普通に二項演算子として扱われて、左から結合していきます。
(15) では (d + Month(1)) - Month(1) => 2015-02-28 - 0000-01-00 => 2015-01-28
に、
(16) では (d - Month(1)) + Month(1) => 2014-12-30 + 0000-01-00 => 2015-01-30
になります。
# (14) julia> d + Month(1) + Month(1) 2015-03-30 # (15) julia> d + Month(1) - Month(1) 2015-01-28 # (16) julia> d - Month(1) + Month(1) 2015-01-30
まとめ
- Julia の日付演算は
- 年・月・日の順番に足し引きをする
- 各段階ごとに繰り上げや繰り下げを行う
- 月部分の計算が終わった段階で、月の日数が減って日部分がはみ出た場合、端数を切り捨てて丸める
- 月が絡むと、特に月末が絡むと難しい
- Julia 公式ドキュメントいわくJavascript やPHP では、1ヶ月を一律31日および30日として計算しているらしい
- 自分で日数に直すのも手
- 二項演算子
+
や*
では引数の数が3つ以上になることがある- 引数の数(=項の数)が変わるとメソッドも変わるため、演算を変えることも可能
- もちろんあまり変なことはしないほうが使用者のため
- 引数の数(=項の数)が変わるとメソッドも変わるため、演算を変えることも可能
@which
マクロを使うとコードリーディングが楽になる
参考文献(というかネタ元)
Julia でデータのセーブとロード
JuliaLang Advent Calendar 2015 の 18 日目の記事です。
概要
他のプログラムとファイルを介して情報をやりとりするお話です。 他のプログラムというのは必ずしもJulia で書かれているとは限らないし、はたまた自分自身のこともあります。 他のプログラムの計算結果をデータ処理したり、逆にこれらに与える入力ファイルを作る場合や、使える計算時間が限られている環境でデータをセーブ・ロードする場合などです。
テキストファイル
open
関数でファイルを開いた後、print, println
関数でファイルに書き込みをしたり、readline
や readlines
, eachline
関数などを使ってファイル内容から文字列、文字列の配列、文字列の配列のイテレータなどを取得できます。
テキストファイルは非常に汎用性が高い形式です。人間が直接読むこともできるし、Grep やAWK, Gnuplot などのUNIX ツールと組み合わせることもできます。
一方で読み込みには文字列操作が必要で、ファイルサイズも大きくなるため、バイナリ形式と比べると性能が落ちます。
xs, ys = rand(100) open("text.dat", "w") do io println(io, "# x y") for (x,y) in zip(xs, ys) println(io, x, " ", y) end end xs2, ys2 = zeros(0), zeros(0) open("text.dat", "w") do io for line in eachline(io) if ismatch(r"^\s*($|#)", line) continue end words = split(line) push!(xs2, float(words[1])) push!(ys2, float(words[2])) end end @assert xs == xs2 @assert ys == ys2
バイナリファイル
テキストファイルと同様、open
関数でファイルを開いた後、 write
関数および read
関数で書き出し、読み込みを行います。
文字列を介さずに直接データを扱えるので、テキストファイルよりもファイルサイズ・処理速度両面で有利です。一方で、Julia 以外で扱えないことや、Julia でも書き込んだ順番や型を覚えておく必要があるという欠点があります。
xs, ys = rand(100), rand(100) open("hoge.dat", "w") do io write(io, xs, ys) end xs2 = zeros(0) ys2 = zeros(100) io = open("hoge.dat") xs2 = read(io, Float64, 100) read!(io, ys2) @assert xs == xs2 @assert ys == ys2
Base.serialize()
とBase.deserialize()
Julia の標準ライブラリとして、serialize(stream,x)
とdeserialize(stream)
という2つの関数が用意されています。
基本的には write
, read
と同じですが、型タグによるメタ情報を付与して書き込むため、任意の値の読み書きができるという利点があります。
メタ情報がある分だけオーバーヘッドがありますが、大抵気にするほどではないでしょう。
読み書きは先頭から順番に行うしかありませんが、辞書をそのまま読み書きできるので、必要なデータを辞書に入れてから読み書きすると楽です。
なお、無名関数以外の関数や型などは名前しか保持しないので、読み出し前に定義が必要ですし、その定義が変わると結果も変わります。
また、メタ情報や内部表現が変わることがあるなど、バージョン間の互換性が保証されていません。長時間保存する場合は後述のJLD.jl
をつかうと良いでしょう。
type A n :: Int64 x :: Float64 end a = A(42, 3.14) open(io -> serialize(io, a), "hoge.dat", "w") workspace() type A x :: Float64 n :: Int64 end a = open(deserialize, "hoge.dat") @assert a.x == reinterprete(Float64, 42) @assert a.n == reinterprete(Int64, 3.14)
HDF5.jl
HDF5 (Hierarchical Data Format version 5) は主に科学技術コミュニティで使われるバイナリフォーマットです。
複数のデータを、UNIX のディレクトリ・ファイル構造のような階層構造でひとまとめにしたフォーマットです。
おおざっぱには文字列をキーにした辞書が入れ子になっていると考えるのが良いでしょう。
辞書オブジェクトをそのまま (de)serialize
するのと比べると、Julia 以外の言語でも使えるという利点があります。実際に、C/C++ やFortran はもちろん、Python やR, Go などの言語からも利用できます。
整数((U)Int(8|16|32|64)
)と浮動小数点数(Float(32|64)
)、文字列((ASCII|UTF8)String
) およびこれらの配列が格納できます。
それ以外の値を格納するためにはファイルに情報(attribution)を追加する必要がありますが、次に示すJLD.jl
はそれを自動で行ってくれます。
using HDF5 h = h5open("hoge.h5", "w") h["n"] = 42 h["x"] = 3.14 close(h) h = h5open("hoge.h5", "r+") # read / write names(h) # => ["n", "x"] dump(h) # show contents # read @assert read(h, "n") == 42 @assert read(h, "x") = 3.14 # append h["arr"] = [32, 64] h["str"] = "julia" # delete o_delete(h, "n") names(h) # => ["arr", "str", "x"] close(h)
Tips
Pkg.add("HDF5")
をすると、自動でHDF5 をインストールしますが、スパコンなどパッケージ管理ツールが使えない場合にはインストールに失敗します。
そういった場合には、あらかじめHDF5 を(自分でソースからビルドするか、管理者に頼むなどして)インストールして、ライブラリのあるディレクトリをLibdl.DL_LOAD_PATH
配列に追加してからPkg.add("HDF5")
をしましょう。
~/.juliarc.jl
に
for path in split(ENV["LD_LIBRARY_PATH"], ":") push!(Libdl.DL_LOAD_PATH, path) end
とかやっておくと便利です。
JLD.jl
JLD はHDF5 フォーマットのJulia 方言です。HDF5.jl
で、Julia の任意のオブジェクトを取り扱えるようにしたものです。
基本的にHDF5.jl
と使い方は同じです。
外部パッケージで定義された型の値を保存する場合、addrequire(jldfile, package)
とすることで、読み出し時に自動でimport
するようになります。
なお、ユーザ定義型を保存するとき、型定義も同時に保存してくれるため、読み出し時に型を定義していない場合、自動で型定義を復元してくれるという謎機能もついています。
一方で総称関数(名前付き関数)は保存できません*1。無名関数はできます。
最後に、(de)serialize
よりフォーマットが安定しているという利点があります。
その他
tsv やcsv などはDataFrames.jl
を使って読み書きをすると便利です。
SQLite.jl
を使うとSQLite データベースに接続したり、クエリ文字列を作ってデータベース操作をすることができます。
ただDataFrame
に変換してそちらを使ったほうが楽でしょう。(参考:14日目の記事)。
*1:する必要はあまりないと思いますが
実例で学ぶ Julia-0.4.1
【2020-01-05 追記 ココカラ】
この本のこのバージョンに言及・紹介してくださる最近の記事などをたまに拝見して、嬉しいのですが、流石にv0.4 は古いです。。。 v1.3 に対応したバージョンが BOOTH で入手可能なのでよろしければそちらもどうぞ。
【2020-01-05 追記 ココマデ】
Julia Advent Calendar 2015 の初日の記事です。去年に引き続き今年も開催されました。
一昨年からコミケで頒布しているJulia 入門書の最新版を公開しました。 昨年の冬コミに頒布したものを、v0.4.1 について書き直したものです。
Dropbox - JuliaBook-20151201.pdf - Simplify your life
ライセンスは CreativeCommons Attribution-ShareAlike 4.0 International です。
本当はパッケージの話でプロッティングをやりたかったのですが、Cairo.jl とTk.jl が現在手元で動かなくて*1、テストができなかったので割愛しました*2
Winston.jl を用いたプロットの例 github.com
これでみなさんAdvent Calendar に参加できますね!!楽しみにしています!!
忙しい人向け
「87ページとか読んでいられるか!!」という人向け日本語記事
テキスト
bicycle1885.hatenablog.com yomichi.hateblo.jp bicycle1885.hatenablog.com
notebook
*1:Cairo.jl の方はIssue にも出てる https://github.com/JuliaLang/Cairo.jl/issues/124
Julia でdeprecation warning の有無を動的に切り替える
julia 起動時に --depwarn=no
をつけわすれて、自作スクリプトや外部パッケージを読み込んだ時に大量の警告文が表示されてうんざりした経験は誰でもあると思いますが、そんな時のために動的にこのフラグを立てる関数を書きました。
switch on/off deprecation warning on running. · GitHub
自作スクリプトの先頭で switch_depwarn!(false)
とかやれば警告文とはおさらばです。
言うまでもないですが、乱用は厳禁です。特に自作パッケージで使うとかダメダメ。あくまで自作スクリプトでのみ使いましょう。
なお、julia-v0.4-rc2 で大量に発生する Uint*
系列や String
などのような型名に対する警告は、julia 側のバグによりそもそも --depwarn=no
が効かなくなっています。 rc3 では直るそうなのでもうしばらく我慢するか、rc1 を使いましょう。
(2015-09-28) rc3 が早速出たのでアップグレードしましょう!